高度差4000 http://www.k4000.jp

事業報告

地域再生塾「高度差4000」 企業人コース
3日目 5限目(120分)

日時 平成21年12月21日18時00分〜20時00分
場所 富山大学五福キャンパス学生支援プラザ 2F

地域再生塾「高度差4000」企業人コース3日目が開講。地域再生塾生10名が高度差4000が生み出す高山帯の動植物の生態から山岳・森林科学論の基礎を学び、立山連峰を代表とする高山帯の魅力から地域再生の可能性を探った。

1.講義 高度差4000環境論

山岳・森林環境論〜立山連峰の魅力〜
講師:富山大学極東地域研究センター 教授 和田直也氏

高度差4000環境論講義イメージ

地球上で森林の連続した地域となる北東アジアの植生分布について紹介、東アジア特有のモンスーン気候と温暖な太平洋の影響による水の供給とプレート運動と火山運動による影響が北東アジアに連続的な森林を成立させたと解説した。

東アジアの山地植生の垂直分布や温度環境について紹介し、日本の垂直分布にはその主要な植生が存在し、特に立山連峰を持つ富山県では暖温帯からロシアの極地ツンドラ帯までの植生がみられると話した。高山帯での生物多様性には雪がつくり出す要因が大きいとし、山岳地形や気候により生じる風衝地と雪田での植生調査の結果を示し、雪が種の多様化に影響を与え、積雪環境により植物分布や個体数に特色が表れることを説明した。

高山植物のミヤマキンバイの風衝地と雪田での生育種の比較例をあげ両集団間で遺伝的分化が生じていることを示した。また、高山帯に生息するライチョウの個体数の変動とハイマツの成長量の相関関係を解説し、自然の変化を長期的に観察することは野生生物を保全する上で重要であると話した。標高の高い黒部川源流部に生きるイワナの調査結果では70%の餌が陸上起源であることがわかり、源流域の河川生態系は森林生態系からの昆虫類等の有機物エネルギーの投入により大きな影響を受けているとし、陸上生態系の生産力の重要性を話した。

2.討議

高度差4000環境論 討論イメージ

山岳・森林環境に関しての疑問や質問・意見など各塾生と講師が積極的に交わし理解を深めた。塾生たちは生物間の相互作用が比較的少ないことで植物と動物の関係がわかりやすい高山の生態系での温暖化の影響や人為的開発の影響など様々な意見や質問が交された。

温暖化の影響についての質問に、和田教授は「立山ではハイマツの成長がやや大きくなっているが、環境的には観光開発による、人工物の影響の方が大きいのではないか」と話し、「変わる前と後の状況を記録し、検討することで、原因がわかればそれを改善することが重要である」とまとめた。

次回の地域再生塾「高度差4000」企業人コースは1月6日(水)海洋環境科学論・水循環モデル論