地域再生塾「高度差4000」平成21年度・企業人コースが開講。初回は公開形式の開校記念セミナーを開催し、地域再生塾の塾生をはじめ企業、行政、関係機関など、約100人が受講した。
開校記念セミナーの司会進行役の丸山育子(KNBリポーター)より、本年度より本格稼働する富山大学地域再生塾が、国・地方自治体・関係機関・地域企業・地域金融・地域メディア連携型の人材育成にチャレンジし、塾生の低炭素循環型の地域づくり実践的プロジェクト提案に産学官金メディアが一丸となって支援する旨を紹介した。
続いて開会の挨拶として、富山大学西頭徳三学長が、富山大学の地域貢献窓口となる地域連携推進機構を冒頭に紹介した上で、同機構が富山第一銀行の協力で昨年度モデル事業として取り組んだ地域再生塾「高度差4000」は、地域の地銀3行との連携とともに、地域メディアも参加し、充実した内容で今年度より本格稼働する旨を宣言し、塾生へ向けて「塾生と大学の研究者や関係者らと一緒に新しい地域づくりについて考えてもらいたい」と話した。
富山大学 地域連携推進機構 地域づくり・文化部門 伊藤裕夫部門長が、地域再生塾「高度差4000」の大きなねらいは「低炭素・循環型社会を担う人材を育成し、地域の活性化・再生化を図っていくこと」であり、今年度の地域再生塾では「低炭素・循環型社会の知(ナレッジ)を様々な角度から吸収した上で新たにカリキュラムに取り入れた演習により低炭素・循環型社会を象徴する高度差4000の全体像を理解し、構想を机上プランとしてだけではなく実現へ向けて、金融機関・メディアの協力や様々な機関の協力が 得られるてバックアップ体制を構築している。塾生の皆さんは学ぶだけでなく、そこから何かを創り上げて欲しい」と話した。
引き続き、富山大学 地域連携推進機構 地域づくり・文化部門 金岡省吾教授より、今年度の地域再生塾「高度差4000」の概要、ホームページ、講義概要を紹介、「低炭素・循環型社会の中でそれぞれの自身の立場として何ができるのかを皆さんで考えましょう。地域活性化のため、塾生も講師も対等な立場で考えるのが地域再生塾のコンセプト。本業に活かせるよう取り組みましょう。」と話した。
立山連峰から富山湾海底までの「高度差4000」の富山特有の豊かな自然環境を理解することは重要であり、これを守り・育み・維持して活用することは地域の活性化・地域再生につながっていく。自然環境の理解には、 富山の地球科学的構造や気候風土を知ること、その環境に生息する生態系の把握が大事である。その中でも大気の循環・水の循環考えることが重要であり、特に「水」がキーワードとなる。
大気や水の循環を考えると最終的に流れこむ海洋に汚染物質が溜まることになる。特に日本海は海峡部の深度が浅く閉鎖的な海域であるため汚染物質が溜まりやすい。海洋中の汚染物質を総合的に検出できるバイオアッセイ・バイオモニタリングにより、自然環境の異常を知ることができる。 汚染物質は生態系の食物連鎖により生物凝縮されるため生物に影響のあるものを一早くみつけることが重要である。
海洋環境の浄化には、化学的処理では別の影響がでるため、微生物の自浄作用により汚染物質を分解、除去するバイオレメディエーションが海洋環境保全で重要になる。また、バイオレメディエーションの研究からバイオマスへの利活用研究も進み、クリーンなバイオエネルギーとして活用が進められている。
地域再生に関して、TMBC(とやまマリンバイオテクノロジー研究協議会)で研究技術を応用して活用しているイワガキの海上養殖やソーダガツオの活用、なまこの陸上養殖の例を紹介した。
最後に「高度差4000が生物を減らさず、生態系サービスがいつまでも受けられるよう自然環境をいかに守るためのバックボーンである。地域資源の探索・育成を楽しんで、ビジネスや生活の質の維持向上や、地域活性化のモチベーションを高めて欲しい。」とまとめた。
パネリスト: | 明和工業株式会社 代表取締役 北野 滋 氏 |
富山大学 学長 西頭徳三 | |
プレゼンター: | 富山大学 地域連携推進機構 地域づくり・文化部門 教授 金岡省吾 |
(現在参加している産学の勉強会を例に上げ)比較的近い同業者の入るディスカッションはレベルの高い刺激となる。本日のような場を与えてもらったことに感謝している。知識と知識がぶつかりあうと大変おもしろい不思議なものが出来上がる。大学はあくまでも触媒であり、大学が入ることで本人は変わらなくても早く進む。また同業者と手を組めば2歩目3歩目を早く進みだすことができる。
西頭高度差4000を地域活性化につなげるには人材を育てることが重要。その場を提供することが必要で、この地域再生塾がその場となる。知の高度化には同業者のディスカッションが刺激になるという話は勉強になり今後の地域再生塾にも意識したい。
金岡地域再生塾の昨年度は異業種の交流はあったが、同業種連携ということも考えたい。地域再生塾高度差4000を場として使って欲しい。
低炭素・循環型社会構築へ向け、ものづくり企業の技術力を生かし、今後どのような地域再生、地域活性化を試行していけばいいのかのヒントをもらい、塾生たちは目指すべき目標像のヒントをつかんで欲しい。
北野氏価格が決められない鉄工所からの脱却のため排煙脱硫装置を開発したことから環境企業へ転換していった。 現在の主流はリサイクル炭化装置プラントであり、活用したバイオマスにより二酸化炭素削減に寄与している。(地域づくりに貢献したカーボンオフセットメロンの展開、籾殻の炭化熱利用による熱回収の展開、バイオマスガス化など活動実績、最新の取り組みや製品を紹介し)バイオマスに一歩踏み込んで目をやれば自分たちで楽しんで社会に役立つことができる。
西頭単価を決められないことから新しい展開として環境ビジネスへ転換したことや環境付加価値を付けたカーボンオフセットメロンの展開から環境が地域ビジネスへ結びついたことは勉強になった。
北野氏バイオマスがコストに合わないといわれているが、タールの活用による価値の向上や炭の認知度の向上で採算が取れるようになってきている。
西頭環境ビジネスはメンタルな面でも楽しみながら参加できるビジネスになりえる。
北野氏長い間、環境と福祉を結びつけていきたいと考えて、職場を提供できた現在がある。
金岡技術開発などものづくりだけでなく、まちづくり・地域づくりに各分野の方がどのように関わっていくか皆で一緒に考えていきたい。
北野氏環境が注目され、環境がビジネスに結びやすい時代になった。産学官連携の取り組みも、ここ数年で大学は変わり利用しやすくなった。触媒として自分で考え、意見を闘わせれば、日本として世界に通用する仕組みやモノができる。
西頭高度差4000は自然の循環だけではない。総合大学としての知を合わせ活用していかなければならない。低炭素型社会・循環型社会・生物多様性の維持など今後1年間の課題が見えてきた。
閉会のあいさつとして西頭学長が塾生へ向けて
「本格的な地域再生塾のスタートとなりますが、学生時代にもどった気持ちで卒論を作成するつもりで多いに考え、ディスカッションをかわして、頑張って下さい。」と激励の言葉をかけ、開校記念セミナーは閉会した。