魚津三太郎塾第2期の12日目が開講。今回は地域再生システム論として「観光」をテーマに富山大学芸術文化学部渡邊康洋教授から,観光の理論やマーケティング,求められる観光地等について学び,「観光」を使って魚津市を活性化させビジネスチャンスにどうつなげていくのかを探った。
「観光は消費減・税収減を埋め合わせる強大な力を持っている」
魚津市では県内で初めて観光条例が制定され,「観光」が地域活性化のキーワードになっている。『観光』について詳しく分析し,「様々な面から見ることによって,どのように使えば地域の活性化が見えてくるはずである」と話し,観光について分析。どのような行動で,人・地域・経済にどのような効果・影響があるのかを解説した。
経済効果について旅行者一人当たりの消費額データと年間個人平均消費額と対比し,観光は消費減・税収減を埋め合わせる強大な力を持っていると,地域活性化への観光の可能性を説明。現代観光の定義について,「日常空間を離れ,楽しみのために『見る』『食べる』『遊ぶ』経済的な行為である」とし,現代観光は商売であるという認識が必要と話した。
観光流動が起こるための動機として『NEEDS』『WANTS』『DEMAND』をあげ,旅行がWANTSとなるNEEDSを分析,全国・県内への旅行NEEDSを紹介,旅のNEEDSのビッグ3として「非日常」「グルメ」「のんびり」というキーワードあげた。また,移動手段として一次交通と二次交通について説明,一次交通の距離が長くなる程,二次交通での移動範囲が拡張する「ラケットの法則」を解説,同時に期待度も比例することも説明し,北陸新幹線開業を踏まえて同法則に照らし合わせた観光戦略が重要と話した。
さらに,観光地訪問者の動機付けとなる観光資源にはAクラスのウリがひとつが必要という「ウリひとつの法則」について解説し,エリアで競合する相手に勝てる『ウリ』ひとつに集中する重要性を説明した。観光情報の発信について,旅行者を引き寄せる一次情報と旅行決定者が得る二次情報の違いを理解して細かく発信することや,観光地での観光施設の質的・量的充実が観光地の魅力アップにつながり,経済効果・旅行者の満足度向上に直結する重要要素と説明,観光地では『ウリ』見ることができ,『ウリ』を見たという納得感を旅行者に与えることが大切であると話した。
近現代の観光発展の歴史について講義し,鉄道・船舶・自動車・飛行機と交通機関の発展と写真技術・コンピュータ・情報通信の発展とリンクして観光の形態が変化していったことや近代の『マスツーリズム』の発生に伴う功罪を説明。対文化,社会,自然環境への弊害を世界・国内の事例をあげて問題と対応を紹介。弊害を軽減するニューツーリズムの考えとして「サスティナブルツーリズム(持続可能な観光)」を紹介説明。新しい市場をつくりだしているエコツアーについてやエコツーリズムの全国の事例を紹介した。魚津市観光振興条例や観光情報発信の事例をあげ,魚津市の観光戦略,戦術は県内ではトップクラスと話し,経済効果を求めるのであれば,マーケティング手法にて適った方法で観光推進を図り,環境資源に対する問題意識を観光推進に活かすことにより,新たなターゲティングが可能であると観光を使った地域活性化についてまとめた。
引き続き,講義について質疑や意見交換がおこなわれた。観光情報の発信についての魚津での対応法や「ウリ」についてやエコツーリズムについて,周辺観光地のなかでの魚津のポジショニングなどについて討議され理解を深めた。塾生たちは,魚津の『ウリ』について深く考え,今後のビジネスモデル形成への大きなヒントとポイントを掴んだ。