高度差4000 http://www.k4000.jp

事業報告

地域再生塾「高度差4000」企業人コース中級
20日目 22限目(120分) 

日時 平成22年8月4日(水)18時00分〜20時00分
場所 富山大学五福キャンパス学生支援プラザ 2F

地域再生塾「高度差4000」企業人コース20日目が開講。農業をとりまく現況を学び,農業への企業参入による農業ビジネスの課題や問題を探り,これからの農業ビジネスの可能性や地域再生コミュニティビジネス起業のヒントを学んだ。

1講義

高度差4000コミュニティビジネス育成起業論
「農業への企業参入を考える」
講師:富山大学極東地域研究センター 酒井富夫氏

高度差4000コミュニティビジネス育成起業論-「農業への企業参入を考える」

「農業への企業参入」
 農業は土地を利用した生命産業であり,土地(土壌)が重要な要素を占めるとし,農業の根幹である農地についての戦後の農地改革から現在までの農地法改正の経緯と背景を講義。農地法の根幹である耕作する者が農地の権利を取得すべきという「耕作者主義」から農業経営のあり方が規制されてきたが,それが社会背景の変遷とともに改革され,農業への企業参入が可能になった経緯を解説。原則として耕作者主義を残し,地域との調和,適正利用,役割分担を必要とするが,農業への多様な担い手の自由競争の場をつくり,企業の農業参入が可能になったと説明した。

「農業の担い手論争」
 農業の大規模化・農業法人化が進む一方,それだけでは全体をカバーできない現状から企業参入が進められているが,土地利用型農業の企業経営(資本主義経営)は成立するのか否かという問題は長い論争となっている。これまで小農標準化から小農経営の経営上昇により大型小農・小企業農へ,また集落営農など多様な経営主体を形成してきたが,家族経営による意思決定や生産管理のほうが適すること等から家族経営は残るとする論調も根強い。また,企業のインテグレーションによる農業支配により,実質的に資本主義化は進展しているとするとの見解もある。

「参入規制緩和の国際的な流れ」
 海外の農業参入規制について紹介し,規制が緩和される流れになっていることを紹介した。参入緩和で期待されることとして技術移転,雇用創出,貧困の削減がある一方,課題として農地提供国の食料安全保障や土地権利の剥奪問題,契約の透明性の欠如,環境破壊などがあるとした。

「もうひとつの農業への道」
 農業のこれからの資本主義化の経路として,企業が直接農場を支配する企業牽引型と,企業が生産者と連携する地域自立型の2つの企業参入経路を示し,企業の農業参入の国内・県内の現状を紹介。直接参入にしろ,農商工連携にしろ,あるべき「企業と農業の関係」を考えて農業参入するべきとした。現在の農産物直売所や農商工連携,米国の家族農場を守る価値観を付加した食品会社の事例を紹介し,地域が大事にする価値観を発信し地域に根ざしたフーズシステムを構築することや,「自然体型農商工連携」をいかにつくるかが,農業のもうひとつの発展の道であるとまとめた。

2討議

農業への企業参入についての各塾生から質疑がおこなわれた。県内での農業参入事例や失敗原因,農商工連携の実情等,各塾生のビジネスモデルに照らした質問や意見が交わされ,今後のビジネスプラン策定へ向けての理解を深めた。

次回の地域再生塾「高度差4000」企業人コースは8月21日(土)
高度差4000コミュニティビジネス論「演習」