高低差4000環境論② Report

2014年01月27日
魚津三太郎塾第3期5日目
高低差4000環境論②
開催日時:平成26年1月27日(月)14:00~17:00
場所:魚津市役所第1会議室

魚津三太郎塾第3期の5日目が開講。高低差4000環境論として富山の水資源と富山湾について地球環境の観点から学び,生命循環の源である水循環と背景にある魚津の自然環境とその特異性,魅力を確認し,今後作成する事業計画の基本コンセプトとなる「魚津の水循環」について考察した。


5日目第9限

講義&討論 高低差4000環境論2

水・物質循環
~富山の水資源と富山湾~
講師:富山大学理学部 生物圏環境科学科 環境科学計測 教授
   富山大学大学院 理工学研究部 環境・エネルギー地球環境システム 教授 張 勁氏
高低差4000環境論2 水・物質循環 ~富山の水資源と富山湾~

冒頭に「知識や常識には落とし穴がある。疑わしい時は調べよう」と知識や常識にとらわれずに物事を考え自分の物にすることの重要性を話し塾生たちへの学ぶ姿勢を応援。魚津の水・富山の水が美味しいことについて学術的に説明することで魚津の高低差4000の環境が生み出す水循環について講義。環境省が選んだ日本の名水百選に選ばれた名水数は北陸・富山が全国で最も多いことを示し,大きな要因として冬の降雪量の多さをあげ,北陸に雪が多い理由を地形や海流から解説。大陸からの寒気の流れ,日本海での雲の発生,3000m級の立山連峰を背にする富山の地形などの条件が揃い多くの雪が降ると説明し,冬の降雪が富山の豊富な水量を支えていると話した。水の美味しさについて成分や水質から説明。

水のイオン濃度をプロットしたグラフの形から水質を目に見える形で表現できると紹介。水の美味しさは硬度と塩素に影響されると話し、美味しさの数値化についても説明し,水は地中内の地質に含まれる鉱物の影響で味に違いがでると話した。また,富山の地形は世界の気候のショーウィンドウと話し,立山山頂の北極圏から富山湾に流れ込む赤道由来の対馬海流まで,きれいなグラデーションで地球のすべての気候が味わえると高低差4000mの富山の魅力を伝え,特に魚津は横軸50kmの範囲で高低差4000mという世界の縮図といえると話した。富山湾の海底から湧出している地下水についても紹介。魚津の高低差4000mの地形からの低温で清潔な海底湧水のおかげで数千年から1万年前の魚津埋没林が保存されたと話し,水のDNAともいえる酸素同位体の分析により,その水の出所が判別できトリチウム濃度の分析から年代も判別でき,湧水の水源や時代が分析できると説明。

海の豊かさは森の恵みの影響で水の輪が作った奇跡という意味の「樹1本鰤千本」という言葉を紹介して水循環の重要性を話した。また、富山湾内の地形や環境,ホタルイカやオオクチボヤの生態の紹介とともに、日本海は世界海洋大循環の縮図であり,地形的特徴から富山湾を知ることが,日本海を調べることにつながり,さらには世界を知ることにつながるとし「すべてのものは水で繋がっている。水で環境の変化を知ることができる」と話し,これまでの研究結果により地球温暖化や海洋汚染の影響が富山湾で早くでてきている事実から、「これからは地球上の長い間のツケを支払っていく時代になっていく」と地球環境への警鐘を鳴らし、国を越えて海洋環境を守ることの必要性を唱えた。


質疑応答&ディスカッション

テーマ:魚津の自然
論点1:「魚津の水循環」の魅力,全国的・世界的な価値
論点2:それを維持しながら活用していくには?誰のため,何のために?今後のゆくえ

今回の講義を受け質疑応答と塾生間でディスカッションがおこなわれた。井戸の水量や水質についてや降雪量不足の影響,魚津の河川の水質の違い,サイエンスコミュニケーションについてなど様々な疑問や意見が交わされ,魚津の水資源と水循環について理解を深めた。

張教授からは「水は地球の血液」というレオナルドダヴィンチの言葉を引用して「日本は世界平均の2倍の降水量があるのに,包蔵水力は世界平均の30%,富山ですら50%しかない。日本人は水の価値を考えていかなければならない」と話した。