たかおか共創ビジネス研究所 第2期 事業リポート

たかおか共創ビジネス研究所

2015年6月24日
8日目第15・16限
地域課題解決型事業立案演習
高岡市の地域課題とビジネスチャンス
日時:平成27年6月24日(水)16:00〜19:00
会場:富山大学高岡キャンパス2階大会議室

たかおか共創ビジネス研究所の8日目が開講。介護の視点から人口減少・少子高齢化社会での地域包括ケアシステムについて説明を受け,介護保険の概念変化による生活支援市場でのビジネスチャンスの可能性を探った。

2015年06月24日

8日目第15・16限

講義&ディスカッション 高岡市の地域課題とビジネスチャンス⑤
『介護の視点』地域包括ケア時代の生活支援市場を展望する
講師:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済社会政策部社会政策グループ長
主任研究員 岩名礼介

介護の視点から人口減少・少子高齢化社会での地域包括ケアシステムについて,講義と研究員の質疑を交えながら進められた。「日本が抱える社会問題である人類未到の人口減少を前提に社会システムや各自の役割をアップデートする必要があり,介護の視点では地域包括ケアシステムは『量』ではなく『質』で考え,地域の中でルールを共有する『統合』の考え方が重要である。また,行政は計画・運営をするのではなく開発をし,介護保険料の抑制を考えるより有効な使い方を考えるべき」と話し,日本が抱える2025年問題と2040年問題について説明。

団塊の世代が75歳を超える2025年は介護リスクの高い後期高齢者が増加し介護需要は爆発的に増大し条件が悪い中での対策が迫られていると話した。さらに2040年まで要介護人口が増え続けることを示し,人口構成での若者人口の減少から担い手不足条件が深刻化するとし,日本創生会議の『消滅可能性都市』にみる若年層減少予測を示した。また,先日発表された同会議の高齢者の地方移住の考え方や背景についても解説,さらに,介護保険制度をめぐる環境として,2025年問題にあげられている介護人材30万人不足と介護費用20兆円超と言われている課題について解説。在宅ケアサービスの重要性について,高齢者の尊厳やリロケーションダメージの観点から,介護施設や老人施設を増やすことより,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる社会環境の持続を目指すことが肝要と説明。地域包括ケアシステムの構築には地域内でバラバラになっている資源を統合する機能を持つ仕組みが必要であると講じた。

また,地域での生活の基盤をなす「住まいと住まい方」を植木鉢にたとえ,「生活支援・福祉サービス」という土が無いと専門職の提供する「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保険・予防」を植えても十分な力を発揮すること無く枯れてしまうと地域包括ケアシステムの構成要素を説明,当事者本人と家族の選択と心構えが必要と話した。さらに,介護・介護支援サービスの人材確保にはロールシフトが必要とし,医師・看護職・介護職が担っている現状の業務や現場での課題を説明。専門職の役割の移行により各々でなければできない業務に従事できるようにすることが人材不足となる時代には不可欠となるため,買い物や調理,洗濯などの生活援助の部分には新たなビジネスの可能性が高くなるとし,同時に様々なサービスをバラバラにやるのではなく統合することの重要性を話した。

また,平成24年からスタートした定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスについての話題提供や住民主体による大阪・大東市の体操教室や,高知市のいきいき100歳体操の事例紹介などから介護の視点からの地域づくりの方策へのヒントを話した。さらに,介護ビジネスについての問題や課題,対処法やアイディアなど示され,介護産業単体では解決出来ない問題があり,ロールシフトが必要で,特に生活支援の部門に介護産業以外の進出が必要であるとし,生活支援ビジネスの展開についての捉え方や展開方法,可能性について説明。また,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるようにする,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築の必要性や介護の問題と福祉の問題を切り離して考えることなどを話した。

本日の講義の合間に随時,質疑応答や意見交換がおこなわれ,介護・生活支援ビジネスと自社のビジネスのマッチングの可能性や地域包括ケアシステムと地域づくりの考え方についてなど研究所員間で共通認識と理解が図られた。