たかおか共創ビジネス研究所 第2期 事業リポート

たかおか共創ビジネス研究所

2015年5月11日
5日目第9・10限講義&討議
地域課題解決型事業立案演習
高岡市の地域課題とビジネスチャンス
日時:平成27年5月11日(月)15:00〜18:00
会場:富山大学高岡キャンパス2階大会議室

たかおか共創ビジネス研究所の5日目が開講。高岡市の行政担当者から高岡の現状や地域課題について情報提供を受け,地域課題の理解と情報の共有化を図り,地域課題解決からビジネスチャンスを探りだした。

2015年05月11日 9・10限

5日目第9・10限

地域課題解決型事業立案演習

講義 高岡市の地域課題とビジネスチャンス① 人口減少・少子高齢化〜地方創生
講師:高岡市経営企画部都市経営課 主幹 日名田尚明氏

全国的な地域課題でもある人口減少と少子高齢化をテーマに講義。日本創生会議が2040年までに896自治体が消滅すると予測発表したことを受け,人口減少社会・地方創生の議論が高まり,国策としての地方創生の取り組みがなされるようになったと話し,日本の総人口や出生数の推移と推計グラフを示し,国と地方における人口ビジョンについて説明。

高岡市における人口減少・少子高齢化の現状について統計グラフを示し,「1985年の188,006人をピークに減少傾向が続き,2000年を境に減少の割合が拡大,今後も減少割合が増え,2040年には127,000人程度まで人口が減少する」という予測がされていることを説明。同時に年少・生産人口の割合が減り老年人口の割合が増える少子高齢化が進み,2040年には老年人口が40%を超えると話した。

人口減少・少子高齢化の影響を説明し,人口問題の分析結果を自然動態と社会動態に分けて説明。自然動態では死亡数が出生数を上回り年間約650人ずつ減少して状況や出生数・出生率の状況,生涯未婚率,年齢別の移動数等の統計数字を紹介。社会動態では1980年以降,転出者が転入者を上回っていることや,年齢別の移動数,県外大学進学率の高さや就職率など要因も含め説明,特に若年層の転出・女性の転出が多いところが課題であるとした。また,県内からの転入は射水,富山が多くを占め,氷見・小矢部からは減少,砺波・南砺からは増えてきており、転出先としては富山・射水が多いが7年前から比べると転出数が減っていると説明。高岡市街地の校区別町内毎の人口推移グラフから中心市街地の人口状況を具体的に説明したり,各小学校児童数・学級数の推移を示し,人口減少・少子高齢化がもたらす危機感を説明した。最後に高岡市では,「若者」「女性」視点から再構築した総合的な人口減少対策として「住まい」「働く場」「子育て」を柱とした体系的な取り組みを展開していることを説明した。

話題提供 人口減少時代の地域再生

舟橋村/子育て支援と宅地開発
〜シェアハウスの次なるコンセプト〜
講師:富山大学 教授 金岡省吾氏

人口減少・少子高齢化に地方行政が取り組むケーススタディとして舟橋村で現在進行中の子育て支援と宅地開発の事例を紹介。

舟橋村の人口増対策からの宅地開発の経緯や人口推移,人口増での課題や過去・将来における地域課題について解説し,現在進行中の課題解決へ向けた舟橋村産官学金プロジェクトに至るまでの経緯を説明した。将来人口の推計を見据えた人口構成の維持と地域課題の解決を目指す舟橋モデル子育て宅地開発は,企業ビジネスで地域課題解決を目指していると話し,子育て環境の充実を図る「子育て環境づくり事業」,公園の整備活用を図る「コミュニティ空間等整備活用事業」,子育て世代流入促進を図る「宅地造成事業」の3事業から構成される「子育て共助のまちづくりモデル事業」への民間事業者へのプロポーザルをおこない,企画競争により選択された民間企業と基本協定を締結し,モデル事業調整会議で事業内容を検討・協議・決定し,地方創生総合戦略を策定して事業実施していくという流れを説明。

国の地方創生制度への全国的にも先駆事例となる舟橋村の取り組みをケーススタディに,地方創生のテーマでもある人口問題という課題解決への考え方やビジネスヒントについて話題提供した。

講義 高岡市の地域課題とビジネスチャンス②

北陸新幹線開業後の高岡の状況と今後の動向について
講師:高岡市経営企画部都市経営課 主幹 長久洋樹氏
 

北陸新幹線開業から約2ヶ月を経過した高岡の状況と今後の展開について説明。北陸新幹線開業での東京圏への短縮効果や新高岡駅と周辺とのアクセスについて,城端線,路線バス,貸切バス,観光バス,タクシー,駐車場,レンタカーの整備や運行状況を紹介。高岡への開業効果として,時間短縮・運行本数・定時性・大量輸送,需要の大きさや環境への優しさ,災害に強いことに加え,都市の拠点性の高揚をあげ,今後特に期待される開業効果として「飛越能の玄関口」としての役割,市内観光客誘引による「交流人口の拡大」市内産業の「ビジネス交流の拡大」が期待されると示し,高岡の優位性や日本遺産認定,ものづくりのまち高岡について詳細を説明した。

また新高岡駅とその周辺環境について説明し,中心部を取り巻く幹線道路網やこれからの交通基盤の整備について紹介した。さらに,開業効果に高岡の知名度の向上や定住促進効果もあったと話し,新幹線学生定期券がアパート代より安価となる事例をあげた。開業後に高岡で「変化したこと」と現在の時点で決定している「変化すること」をあげ,今後も高岡市を取り巻く環境が変化していくと話した。開業効果としてあげられた交流人口の増加に関して現時点の状況で検証。高岡から東京・大阪への時間と経費の比較から新幹線が交通手段として必ずしも選択されないとし,先行地域での経済波及効果の検証からも北陸新幹線は観光需要が多い路線と考えられると話し,今年のゴールデンウィークの県内入り込み数をあげ,1%増える毎に延べ約3万人の交流人口が増加すると説明。越中五山,立山黒部,金沢・能登,五箇山・飛騨を巡る旅での県外客入込数と1%増加で増える交流人口数についても示し,観光需要による交流人口増加の可能性を話した。また,ビジネス交流について,日帰り圏域が拡大したことに伴い,首都圏も営業圏にはいりビジネスチャンスが増えると同時に,競合もふえることや支店・営業所の統廃合が促進される影響について考察や開業による高岡の知名度向上について,定住促進へ結びついていくかなど開業2ヶ月後現在の状況と今後の展開・展望を説明した。

座談会&ディスカッション

・講義の感想 印象に残ったことは?キーワードは?自社もしくは構想の展開の参考になったことは?
・講師への質問
〈切り口①〉 人口減少・少子高齢化,地方創生の流れ
〈切り口②〉 北陸新幹線開業による光と影

各講義終了毎に塾生からの講義内容への質疑応答がおこなわれた。高岡市の人口移動や宅地造成のあり方,高岡の人口対策への取り組み,若者居住や出生率・婚姻者の増加について,補助金制度について等様々な質疑と意見交換がなされ,各情報の共有化を図った。研究所内での活発な討議を通して,社会課題でもある人口減・少子高齢化という高岡市の地域課題の現状を把握し,地域活性化への方向性やビジネス展開の可能性を探った。