魚津市 富山大学

魚津三太郎塾  事業レポート

 

地域再生システム論

2015年06月12日
7日目第11限
講義&討議
地域再生システム論① 里山の再生と資源活用
講師:富山大学芸術文化学部 准教授 奥敬一氏

魚津三太郎塾第4期の7日目が開講。地域再生システム論として富山大学の奥敬一准教授から里山の再生と資源活用について学び,魚津の水循環において重要な役割を占める魚津の里山の将来像を考えた。

高低差4000環境論②“さかな”と水循環 〜森・里・海と魚〜

講義の冒頭に,日本の国土面積の約2/3が森林をしめることや樹木の成長過程について塾生と確認。里山は,人の暮らしのために森林資源を利用し,手を加えて管理してきた山林で,里山の形について,木々が10年から15年で持続的に修復していく姿を理想とし,実際には木の無い状態の部分も含め組み合わさった形が里山の姿と説明。

里山集落の古い絵地図を示し古来からの山の使われ方を紹介,昔の里山についての聞き取り調査での山の使われ方,植生配置や木の利用方法,山の姿について説明し,山を使い分けて利用している様子を伝えた。現代の里山が抱える問題について説明。山が使われなくなったことで生じた生物生息地の変化や生物多様性への課題,伝染病による木々が枯れる被害の拡大についてあげ,ナラ枯れ被害は森の年齢が40歳を超えたところに多くなるとし,老齢の木が増えたことで原因となる虫が繁殖しやすくなると説明。

山の手入れがされなくなった影響とし,成熟していく日本の森林は,里山にとっては良いことではないと話した。樹木の老齢化による再生する力の低下について説明。大径化すると萌芽力が低下すると話し,里山林での問題として,ナラ枯れの危険性増加や下層植物相の貧弱化,若返りの難しさ,一般の人に扱えきれなくなることなどをあげた。対応策として小面積皆伐という管理の選択肢があると提示。間伐ではなく全て伐り,萌芽による再生を図ることで,枯れてしまう前に若返らせて,資源として活用できる構造にする管理法が里山再生には必要であると話し,将来的に,地域社会の人たちにも管理・利用しやすい状態で維持できるとした。

また,現代的な利用で里山と地域の再生を促すことが重要とし,里山林を活用した生業を地域の中につくることが大事とし,バイオマス活用などの事例を紹介した。農山村を支える考え方として,例えばバイオマスやキノコ山菜・薬草など幾つもの事業を組み合わせて生業とする「複業形態」での仕事と考えれば,様々な展開もし易い多様な仕事があると話し,小規模業態を混成した国際競争に巻き込まれない資源を利用した多数の副業・複業の考えが農山村の再生に必要とした。

さらに,補助金頼み,ボランティア頼みだけの里山管理だけでなく,管理で生じる材を生活のための資源として利用し,経済的価値や生活の豊かさのような価値を加え,利用のための動機付けを生み出すことが大切とした。実例として社会実験として行った「薪による里山利活用」について紹介。薪は加工が最低限で大がかりな施設も装置も不要で維持管理も必要とせず,燃焼効率の高い燃料であり,薪ストーブでの火のある暮らしの楽しみが味わえるなど利点を説明。薪づくりの過程や薪ストーブ導入でのエネルギー利用の変化や二酸化炭素排出削減,生活の質の変化について,初期コストや薪の持続的確保などの課題などを報告。薪ストーブ導入の社会実験を通じて個人や地域での里山管理への関わりが増えてきたと話した。また,薪需要の掘り起こしを図った薪の試験販売の様子や市民団体と協働でのモニタリング調査の様子を紹介し,持続的な薪生産への可能性を示した。

最後に,里山からの資源活用の原則として「資源・環境の持続性を重視する」「多様な関係者によるモニタリングを行い,順応的に対応する」「日常生活にプラスアルファの価値を付け加える産品をめざす」「ひとつの産品で無理に専業化させない」「資源の買い手に,よい『物語』を提供する」ことあげ講義を終了した。

休憩

塾生から講義・講師への質疑応答と「理想的な人と自然の付き合い方・距離感」「企業(産業)にはどのような視点,関わり方がもとめられているか」を論点とした討論がおこなわた。

塾生たちは魚津の里山の現況をイメージしながら里山が抱える課題や実際に生活している人たちを巻き込んで里山再生できるヒントや取り組みについて意見交換し,山の恩恵を魅力を伝えること,これからの里山再生や森林保全について話し合われた。魚津の水循環において重要な役割を占める魚津の里山の将来を考えた対応の必要性を再確認し,今後の事業計画案作成へ向けたヒントを掴んだ。