魚津市 富山大学

魚津三太郎塾  事業レポート

魚津三太郎塾第4期開講式

2015年02月27日
魚津三太郎塾第4期開講式
日時:平成27年3月2日(月)14:00〜17:00
会場:魚津市役所 大会議室

富山大学と魚津市の共同主催による,魚津の将来を担う企業人・地域リーダーの育成を目的とした「魚津三太郎塾」の第4期開講式が行われ,「魚津の水循環を守り・育み・活用による地域と企業の繁栄を目指して」をテーマにビジネスプランや地域プロジェクト創造を目標に本年10月までの講義がスタートした。開講式には塾生の他、主催の富山大学,魚津市関係者,協力金融機関各行と後援機関各団体関係者、マスコミ関係者ら約60名が参加した。

開会

開会にあたり主催者の魚津市を代表して魚津三太郎塾塾長である澤崎義敬魚津市長が「人口減少時代へ向かうなか、次の世代のふるさとを担う若い人材の育成を早い段階から産学官金で取り組み、1期から3期の修了生たちが、異なる分野の人々と交流をもち絆が生まれ活発となってきたことを喜んでいます。魚津のアイデンティティを誇りに持ち、若い人が頑張っていかないと将来がない。いろいろなところで活躍していく人材が4期の中でも育っていくことを願っている」と挨拶。

魚津三太郎塾第4期開講式 開会 オリエンテーション 4期生自己紹介

同じく富山大学を代表して,遠藤俊郎学長からは「それぞれプロの道を歩んでいる塾生の皆さんがこれから自身をブラッシュアップし,社会のため日本のため世界のためにどう貢献しできる人になってください。ご自身の将来のため,塾のみんなで学んでいってください」と挨拶した。

オリエンテーション

魚津三太郎塾とは〜開講経緯と目標〜
説明:魚津市企画政策課 前田久則氏

第4期開講にあたり,塾の開塾までの背景や経緯,開講の目的や概要,修了生たちの取り組みについてを説明。魚津市と富山大学との共同主催で地域金融機関の協力と関係機関やメディア等と連携して,魚津の将来を担う企業人・地域リーダーの育成を目的とし,自ら考え行動する人材の育成を目標にした塾で,地域や企業の課題を地域の資源・企業の特徴を活かして解決する事業計画・プロジェクト作成を目指すとし,塾開講までの経緯を説明し,地方創生へ早い時期から対応してきたと話した。世界でも稀有な存在である魚津の水循環をテーマにし,「水循環」を守り・育み・活用するという環境と経済を両立させたビジネス手法による地域課題を解決させ地域活性化へつなげていくこと,自分の企業が生き残れることを第1に考えること,念頭に置いて,将来の魚津をイメージしてドコに目標を置くかを考えた講義を進め,4期からはケーススタディを多く取り込むと説明。本塾の4つのキーワード「環境ビジネス」「社会的課題」「地域的課題」「価値の創造」について紹介し,何をすれば自分の企業が生き残れるか,自社の強み,自身の特技はなにか,自社のある地域のことを知ることを常に意識して講義やディスカッションに臨むよう塾生へ伝えた。

持続可能な地域であるためには,市民暮らしの根幹である雇用確保が必須で本塾が企業後継者の育成や第2創業,新規事業創造へ繋がるとし,将来のために地域における創業支援体制の整備のためには産官学金の連携が必要と話した。また,第1期から3期まで30人を輩出した魚津三太郎塾修了生の動きを紹介。塾で作り上げたプロジェクトを実行に移した修了生の事業展開や現状,魚津での異業種の若手企業人としての輪が拡がり,協力し合って展開している事業などを取り上げ,修了生たちの活躍ぶりを伝えた。本塾のカリキュラムのイメージとして前年度第3期の内容を元に説明。開講式から修了式までの流れと講義内容・演習風景などを示し今後のカリキュラムのイメージを伝えた。

4期生 自己紹介

本日参加の6名の塾生が,自己紹介をおこない企業情報や事業内容,本塾への参加動機や抱負などを各自1分の持ち時間で発表した。

大村充氏 (有限会社大村造園)  稗苗良太氏 (ひえばた園)  山本大年氏 (一般財団法人 魚津市施設管理公社)  松原祥子氏 (有限会社源七)  芦崎里香氏 (有限会社ミールサービス)  若林健嗣氏 (日本海電業株式会社) (欠席)宮本晃裕氏(宮本みそ店)

特別講義

すべての基本は「人」

講師:株式会社インテック最高顧問 中尾哲雄氏(魚津市名誉市民)

魚津三太郎塾第4期開講特別講義として富山県の財界を代表する中尾哲雄氏から人との出会いや関わりの大切さ,経営から人生におけるすべての基本である「人」について講演いただいた。

魚津三太郎塾第4期開講式 特別講義

魚津市出身の中尾氏の祖先について,魚津の三太郎博士・川原田政太郞博士や盛永俊太郎博士とのエピソード,旧制富山高校在学時代,青冥寮の先輩が書いた先輩の落書きへの返事を手紙として送ったエピソードを紹介。その手紙が縁で出会った吉田実元富山県知事宅へ招かれた話や不二越創業者の井村荒喜氏との出会いと井村氏が文章を大切に思う「文は人なり」という話,元北陸電力副社長の西泰蔵氏の「すべての基本は記憶」という考え,元インテック社長の金岡幸二との出会いと「短い人生だからこそ苦労して一生懸命働く」という言葉を紹介。インテックの全身・富山計算センター設立時の様子や関西電力黒四ダムでの短歌が縁となり今日までの人間関係が築けたことをあげ,「わずかなキッカケを大事にしていくことで人との繋がりが生まれ,自分の会社の発展に繋がる。経営は顧客の創造,顧客は近くだけでなく様々なところにいる。創造は組み合わせである」と説き,これまで技術と技術の組み合わせ,企業とインテックの結びつきで新しいモノを創り出してきたが,人間関係がなければ結びつくことはないと話し,人の関係を基本にしている「際」のキーワード「国際化」「地域際化」「世代際化」「学際化」「業際化」について説明して交わりを持つことの重要性を述べた。

人とのつながりは形式的な表現や事務的な表現ではなく心を込めたものでなければいけないとメールや電報の例をだして説明,自分の文字で手紙を出すことの素晴らしさを話し,人との付き合いは学歴や能力を超えた評価基準である人望を得ることとし,朱子学の「近思録」に記された人望を得る九徳を紹介。ひとつでも自分のモノにして欲しいと述べ,非常識な行為をしないこと,人間的魅力,話す・聞く・書く・読むというコミュニケーションが大切と話した。さらに,経営には5つの蓄積である,「信用」「資本」「奉仕」「人材」「顧客」が自分の中で描けるかが大切であり,塾生へ向けて「血の通った,信念のこもった経営理念を入塾を契機に考え直してみてください」と呼びかけた。また,中尾氏の人生を大きく変えた川喜田二郎先生のKJ法との出会いや数量化理論についても説明。

最後に,リーダーの資質は優しさで有り,視野を広め,読書による自己の拡大,人脈を1人でも拡げ,体を鍛え,公私の区別をつけることが必要とし,自分が何をしたのかを考え,自分を知り実行していかなければ人間は成長していかないと話した。

高野辰之の童謡「故郷」の4題目として中尾氏が作った歌詞を紹介、何処かに心のよりどころを持つことが大切と話し,砂時計にたとえ「時は過ぎ去っていくのではなく体の中に積もっていくモノ,若い諸君には美しい時を刻み積もらせていただき,それが諸君の将来の成長・人間的魅力となって現れていく」と塾生たちへエールを送った。

座談会

〜人材育成システムとしての魚津三太郎塾〜
パネリスト:澤崎魚津市長,遠藤富山大学学長,中尾哲雄氏,第4期塾生,協力関係者
プレゼンター:富山大学地域連携推進機構教授 金岡省吾氏

人材育成システムとしての魚津三太郎塾の方向性について座談会が開かれ,参加者の意見が交換が交わされた。

魚津三太郎塾第4期開講式 座談会

金岡教授:
「特別講義への質疑応答ということで聞いてみたいことを4期生塾生の方からお願いしたい」

若林塾生:
「自分は何者か何をするかわかっていなければならないとありましたが,自分のやるべき道が定まっていない場合はどのようなことを足がかりにすれば良いのでしょうか」

中尾顧問:
「人生のうちで長期的にやっていきたいことを持ってなければいけないが,今日やることを見極め考えていくこと,今期仕事面で自分としてやりたいこと決めるようにする。KJ法で数を出した中で長期的に人生でやりたいことを考えてみるのも良い。見つけて考えることに人間の成長がある。自分の人生は自分で考え,見つけ出して掲げ向かっていく努力をすることが大事。何をやるのか持っている人は強い」

山本塾生:
「KJ法とはどんなことでしょうか。教えてください」

中尾顧問:
「川喜田二郎先生が考えた手法でアトランダムに意見をカードに書き分類整理して全体を把握し系統に分け見出しを付けベストの解決策を見いだす手法」

金岡教授:
「ワークショップなどで多く用いられる手法です。自分でキーワードを出していって整理してみてください」

芦崎塾生:
「心に残った言葉は「なぜあの人について行くのか」ということでの5つの言葉について今一度教えてください」

中尾顧問:
「企業は奉仕しなければお客様が付いてこない。人望がなければ人は付いてこない。厳しさと優しさを持つことが大切」

金岡教授:
「三太郎塾では企業の経営で地域課題を解決することを目指している。絆・魅力といった経営学のCSVの要素を判りやすく伝えていただいた。塾生の皆さんは心の中に入れてこれからの講義に臨んで欲しい」

金岡教授:
「時代・環境の変化の中で魚津を守っていくにはどうすればいいのか?地域課題や絆といった部分から塾長である市長からお話をいただきたい」

澤崎市長:
「故郷を離れて良さを知ることが多い。子供たちが少なくなることで教育環境も変わっていった。自分たちの故郷がこれでいいのかという思いを常に持っている。人の交わりが減り,地域の繋がりが希薄になっていくという課題がある。魚津市では次年度から市内全域で地域振興会ができ,地域毎の特色をだして組織として地域を守っていく体制がとれる。自分たちの故郷は自分で守ることが重要である。どんどん変わる故郷の姿の中で私たちの故郷がどう生き残っていくのか自分たちのデザインで自分たちで考えて欲しい。塾生の皆さんは元気の素になって,地域の中でバリバリ活躍する姿勢を持って欲しい」

金岡教授:
「様々な地域の課題をわかりやすくお話しいただいた。塾生の皆さんは地域の課題が何かを考えて,修了式には答えを出せるようにしてください」

金岡教授:
「大学も変わっていく。大学の力を活用して地域活性化を一緒にする動きを早い段階から進めている。行政と大学,金融,協力機関が一緒になり企業・地域課題を解決へ導く魚津三太郎塾は全国のモデルとなっている。大学として期待することは何か?」

遠藤学長:
「大学・日本の教育は時代のスピードと共に変わってきている。大学は常に変わり新しくなければいけない。大学と魚津市が三太郎塾という形ができていることは喜ばしい。財産は人材である。1期から3期までの修了生は魚津で頑張り成果をあげている。これからの4期7名も加えると40名弱の人材が居るのが一番の力である。新しいプロジェクトが生まれるのを楽しみにしている。中尾氏の講演にあった5つの蓄積はどの世界にも通じる。人望や際は塾生の皆さんの共通の目的になるだろう。修了生の皆さんで魚津に大きなプロジェクト創ってみるのも面白い」

金岡教授:
「多業種から集まり個々がプロジェクトをつくる塾は全国的にも珍しい。中尾顧問から塾や塾生へ対しての感想などお願いします」

中尾顧問:
「地域活性を考えるのは市長だけでなく,異質な人々が集まり提携していくことが必要。集まるだけで活性化していく,新しい隙間のビジネスはいっぱいある。情報はもらうだけでなく出し合い,必要なものを自分で探す。怖がらずに挑戦し,積極的にモノを考えて,自分のアイディアを出し,対等につきあっていってください」

金岡教授:
「この塾は場所である。自分に無いものを求め,情報は自ら探す。塾修了生と連携を考え,新しいネットワークをつくり自分を考えてください。本日の話しを心に刻み,修了式で答えを出してください」

閉会挨拶

富山大学 理事・副学長 丹羽昇氏
魚津三太郎塾第4期開講式 閉会挨拶

「今回で4期目。良い人材が育っている。継続しなければ人材は育たない。地域再生と言われているが,地域を担う人材が不足している。こういう場で育てていくことが重要である。地域創生のための経営者をつくっていくことが求められている。地域資源を見つめ地域の変化を見定め,変化の中にある課題を見つけそれをビジネスに繋げていく。中尾氏の講演にあった「経営は顧客の創造」は非常に含蓄のある言葉である。本日はいろいろな話しがでてきたが,塾生の皆さんは今後とも頑張ってください」

協力機関

富山銀行 富山第一銀行 にいかわ信用金庫 北陸銀行 北国銀行

後援機関

魚津商工会議所 中部経済産業局北陸支局 富山県新世紀産業機構 富山県中小企業団体
(株)新川インフォメーションセンター 北陸職業能力開発大学校 学校法人荒井学園