魚津市 富山大学

魚津三太郎塾  事業レポート

  

魚津水循環 高低差4000環境論

2015年04月10日
4日目 第8限
高低差4000環境論①
水・物質循環 〜富山の水循環と富山湾〜
講師:富山大学大学院理工学研究部 教授 張勁氏

魚津三太郎塾第4期の4日目が開講。
本塾の概要や目標,カリキュラムイメージについての再確認と「環境と経済の両立による地域づくりと企業行動」についてをケーススタディから学び,塾生各人が今後取り組む個別プロジェクト作成へ向けてのの第1歩が本格的に始動した。

冒頭に「知識や常識には落とし穴がある。疑わしい時は調べよう」と知識や常識にとらわれずに物事を考え・調べ自分の物にすることの重要性と学ぶ姿勢をアドバイス。環境省が選んだ日本の名水百選の昭和と平成の全国分布図を示し,富山が全国で最も多い数であると紹介。美味しい水は自然からの恵みであると話し,大きな要因として降雪量の多さ、特に冬期間の積雪が影響していると説明。富山の降水量が多い理由として,日本海の海流,大陸からの距離,地形などから解説。

大陸からの寒気の流れ,日本海での雲の発生,3000m級の立山連峰を背にする富山の地形などの条件が揃い多くの雪が降ると説明し,自然現象にも理屈があることを塾生たちは理解した。また,美味しい水の条件について学術的に説明。水の成分を分析したグラフから水質を目に見える形で表現できると話し,水の美味しさは硬度と塩素に影響されることや美味しさの数値化について説明,水は地中内の地質に含まれる鉱物の影響で味に違いがでると話し、富山・魚津の水の旨さを示し,水道からミネラルウォーターが出ていると比喩し,レベルの高さ評価した。

高低差4000mの自然環境を有する富山の地形について,世界の気候のショーウィンドウと話し,立山山頂の北極圏から富山湾に流れ込む赤道由来の対馬海流まで,地球のすべての気候が味わえると理論的に説明。

富山湾の海底から湧出している地下水について紹介し,魚津は高低差4000mの地形からの低温で清潔な海底湧水の影響をうけ数千年から1万年前の埋没林が保存されたと話した。この湧水の起源についてDNAから水の出身地を辿る研究,酸素同位体の分析による水の出所について,トリチウム濃度の分析による年代判別,湧水の水源や時代分析ができると説明。魚津の海底湧水は標高500〜1200m付近で地下に浸透した水が10年〜20年かけて湧水しているとし,海の豊かさは森の恵みの影響で水の輪でできているという意味の「樹1本ブリ千本」という言葉を紹介した。

また、富山湾内の地形や環境,ホタルイカやオオクチボヤの生態の紹介とともに、日本海は世界海洋大循環の縮図であり,地形的特徴から富山湾を知ることが,日本海を調べることにつながり,さらには世界を知ることにつながるとし「すべてのものは水で繋がっている。水で環境の変化を知ることができる」とし,富山は研究フィールドとして最高の場所であると話した。

最後に塾生へのメッセージとして,明確・簡潔な論点で説得力・分かりやすい合理的な構成で論述し,論点と一致するインパクトある訴えができる結論をだすこと。成功の鍵として「常に異を意識し,軸を持ちながら発想を自由にすること」「多方向、ワンゴール」「賢い、怠けではない」「責任を持つ,遊びを忘れない」といったキーワードを紹介した。

休憩

塾生から講義への質疑・討論がおこなわれ,水資源の将来性や環境変化における影響,地下水や海底湧水,富山湾と他の湾との違いや富山の特異性などにつての様々な水資源と水循環についての疑問や考えが投げかけられ,理解・確認をおこなった。張教授からは「環境へのの対応は10年20年先を見据えた対応が必要で,危機とみないでネガティブなことをポジティブに考えていくことが大切。水は大切で10年先に何が残せるのかしっかり考えていくことが重要」と話した。