魚津市 富山大学

魚津三太郎塾  事業レポート

  

魚津水循環 高低差4000環境論②

2015年04月23日
5日目第9限
講義&討議 高低差4000環境論②
“さかな”と水循環 〜森・里・海と魚〜
講師:魚津水族館 学芸員 伊串祐紀氏

高低差4000環境論として魚津水族館学芸員の伊串祐紀氏から魚津の自然環境に生きる河川や湖沼から海の魚類について学び,魚津の水循環における生態系や自然の魅力について考察した。

高低差4000環境論②“さかな”と水循環 〜森・里・海と魚〜

昨年11月、魚津水族館創立100周年記念誌として魚津水族館職員だけで作成した図鑑「富山のさかな」を紹介。富山の水循環が育んだ生物をまとめた同書に収録された写真や図録を資料に,富山・魚津の自然環境についてや,河川・湖沼や富山湾に棲む“さかな”の生態について解説した。冒頭に,富山県の標高地形図を示し,富山県の3000m級の山地から1000mの深海があり,水平距離50kmに高低差4000mを有する地形であると説明。さらに魚津市の地形について,1000mの深海から2400m級の山地が水平距離わずか25kmに存在し,1つの市の短い距離で水循環がおこなわれている世界的にも稀有な地形であると説明し,魚津の水循環は富山の水循環の凝縮であると話した。

魚津の地形が育んだ自然環境の特色でもある急流河川について上流から下流域までの状況と生息するさかなについて紹介。また,富山県内の河川でも県西部の河川は緩流となり環境の違いから生息する魚も違うと説明。多様な自然環境を持つ富山県の水生生物の生態域多様性についてふれ,ダム湖や湖沼,湧水池,汽水域の湾湖や河口に棲むさかなについてや生息環境について紹介。人為的な影響が多い水生生物の生息の場でもある水田についても解説し,季節毎の多くの生物を育む環境についてや農薬や農作業で与える影響や作業時期による変化についても説明した。

海水域の生態環境として砂場・岩場やアマモ場・ガラモ場,深海底の環境と生態生物についても紹介。特に海のゆりかごとも言われるアマモ場については産卵場や海の循環に大切な役割があると説明。富山湾の1250mの水深は日本で駿河湾,相模湾に次いで3番目に深く,大陸棚が発達しておらず,県東部では急深しているのが特徴で日本海に生息する約800種類の魚種のうち富山湾には約500種が生息すると話し,富山湾の断面を提示して表層海域から深海域までの様子を説明した。

富山湾のさかなについて、一生富山湾で過ごすタイプ,定期的に富山湾へやってくるタイプ,偶然富山湾にやってきたタイプに分類して紹介し,富山県のさかな「ブリ」「ホタルイカ」「シロエビ」について呼称や味覚について説明。さらに,魚津のさかなについて,ウマヅラハギやイワシ,タイなどや魚津水族館で世界で初めて発光が確認されたマツカサウオ,魚津ではじまったカニ籠漁で穫られるベニズワイガニなど,写真やエピソード、水族館の展示の話題なども含めて紹介した。

また,伊串氏自身が魚津三太郎塾第1期修了生でもあることから,自身が塾に参加した時の取り組みや感想を話した。魚津の自然の素晴らしさを子供たちが楽しんでいないことを残念に思い、事業プランとして生き物が多くいる田んぼでの子供たちが親しむ姿を目指し,魚津水族館リニューアル時に「富山をみせる生物多様性コーナー」をつくり実現させた過程や,水槽の中での田起こしや田植え,稲刈りなどの様子を紹介。職員で作成した図鑑「富山のさかな」や自身が製作して人気グッズとなっているさかなイラストの缶バッチなどについても紹介した。

休憩

塾生から講義への質疑と,魚津の自然や生物多様性・生態系について,魚津の水循環の魅力や企業の立ち位置について,技術力や経営資源を生かし水循環にどのように関わり何をすべきかを論点とした討論がおこなわれた。

討論では,場所をつくるだけではなく人をつくり育てることの必要性や共感者を集めることの大切さ,魚津水族館への質問や提案など様々な議論がなされた。事務局の前田氏から「魚津の水循環についてこれまでの講義で理解したことを言葉・文章で表現できるようにしてください」と課題が出され4日目の講義は終了した。