地域再生の核となる大学づくりCOC構想の推進 シンポジウム

地域再生の核となる大学づくりCOC構想の推進

2012 12/1(土)平成24年6月に文部科学省から公表された大学改革実行プランの中で謳われている「地域再生の核となる大学づくりCOC(Center of Community)構想の推進」を受け今,大学が地域の課題解決に取り組むことが求められています。富山大学地域連携推進機構地域づくり・文化支援部門では,行政・金融関係者約130名が参加し,大学関係者も交えた特別公開フォーラムを開催しました。

■シンポジウム

地域の担い手に求められている新たな役割

パネリスト 長島 剛氏 (多摩信用金庫 価値創造事業部長)
  煖エ正樹 (高岡市長)
  遠藤俊郎 (富山大学長)
  秦 正徳 (富山大学 芸術文化学部長)
コーディネーター 渡邉康洋 (富山大学 地域連携推進機構 副機構長)

シンポジウム会場の様子
長島剛 氏写真
長島剛 氏写真
受講風景
受講風景
受講風景
受講風景
受講風景
受講風景

「地域の担い手に求められている役割は何か」をディスカッションテーマに,地域づくりを取り巻く環境変化や大学と地域の関係を論点にディスカッションし,これからの地域活性化のためにどのように連携を取り,どのような役割を担っていくのかを探った。

地域づくりを取り巻く環境変化

大学を取り巻く環境変化

遠藤学長:

「18歳人口の減少の中,国立大学の価値・評価・存在をどこに置くのか重要になっている。科学・情報技術の変化進歩によるグローバリゼーション化の中,それぞれの機能分化とそれをどう繋げて集約化するかが問われている時代である。利益を生み出す分野には関心が高いが,利益を生み出さない文化への関心は低く,文化の維持は大学の役割の1つである。大学は人間を育てる場であるが,専門化が進む中でベースを持ちながら繋げて他へ発信し,人の役に立てる人材にどうやって新しい若者を育てるかが大学の課題である。社会・企業が求める人材を協力して大学が育てることもCOCである。国立大学がどう社会へ貢献して生き残っていくのが重要である。若い世代への応援が地域を支える力になる。」


地域を取り巻く環境変化

煖エ市長:

「少子高齢化,国際化,情報化という日本全体の環境変化の中で,地方都市高岡でも様々な転換が求められる時代となっている。その中でも大きいのが北陸新幹線の開業である。情報化が進めば進むほど顔を合せる機会の重要性が高まる。首都圏と約2時間で結ばれる意義は大きい。高岡が抱える課題・方向性として交流・観光があげられる。人口が減少する中,交流人口の増加が課題であり,人に来てもらう魅力づくりが必要。「ものづくり」「歴史文化」を切り口にして,心の豊かさを与え,人を呼び込むまちづくりに取り組み,経済の豊かさだけではないまちのうるおいをつくっていきたい。そのためには新しいものを受け入れる風土も必要となる。大学には地域の活力発掘に力を貸して欲しい。」


大学と地域の関係「これまで」と「これから」
 〜大学に何が求められ,行政に何が求められるか〜

富山大学と高岡市との連携

秦学部長:

「富山大学と高岡市とは包括連携協定を締結している。芸術文化学部とは密接な連携関係にある。年間30件ほどの連携事業があり,成功事例としてゾーンミュージアムの金屋町楽市,市美術館企画展としての卒業制作展の開催,まちなかでの芸文ギャラリー等がある。成功要因は,高岡に愛されて創立した大学の歴史と地域のキャンパス化を実践してきたことにある。また,まちの課題を授業で取り上げ,解決をする「つままプロジェクト」に代表される,大学と地域が協働して共に汗を流す取り組みも成功のための重要な要素である。」


煖エ市長:

「高岡短期大学を前身とする芸術文化学部は,高岡市民の熱い思いでできた学部で愛着がある。ものづくりのまち高岡の伝統工芸やデザイン,建築,芸術,文化といったユニークなコース構成の大学が地域にあり,学生らがまちにでて高岡を考えてくれているのはありがたい。様々なプロジェクトが高岡のまちで実現され,大学と市民・地域とのコミュニケーションが図られていることがうれしい。これからも学生らにとって高岡が楽しい生活のまちであり,地域にとっても大学からの新しい刺激を楽しみ,受け入れることができるまちにしたい。」


富山大学の新たな取り組み

渡邉副機構長:

「地域づくり・文化支援部門では,地域資源を活用しビジネスに活かせる人材を大学・行政・金融・企業が連携して育成する「魚津三太郎塾」や地域住民自らが村民憲章を制定し,未来のまちづくりを構想する舟橋村連携事業等,多くの地域連携事業を展開しているが,いずれも一緒に汗をかき,同じテーブルの下で取り組む「協働」のスタイルでの取り組みで成功している。」


金融機関の求められている役割の変化

長島氏:

「変化に合わせた形で金融機関も変化している。商品販売のためのイメージアップのCSRではなくなっている。地域活性化も業績を伸ばすためや国等から言われているからという理由でやるのではなく,そのまちを本当に活性化するには何が必要なのかを考えることが大事である。地域の人材のネットワークづくりや地域の事業者らを本気にさせて地域で循環させる仕組みをつくる等,新しい発想と実行力が必要となっている。」


これからの地域活性化のために

煖エ市長:

「大学と一緒にこれからも様々なテーマについて相談し,高岡市の様々な課題を発見・抽出し,解決に取り組みたい。地域課題解決に取り組むコミュニティビジネスの支援や学生のまちなか居住,大学のサテライトのまちなか設置等これからの新しいまちづくりに向けて連携をとっていきたい。」


秦学部長:

「学生のまちなか居住には公共交通機関の整備も含めたグランドデザインを考えていきたい。高岡に人文社会学・芸術系の研究拠点となる研究所やセンター等,文化の殿堂となる拠点が増えていってほしい。」


渡邉副機構長:

「富山大学地域推進連携機構では地域の課題を住民の方々から受け入れる窓口で,毎月数件のプロポーザルを受けている。地域の課題を解決して行くことがテーマで,COCがひとつの求められる柱であり対応できるようにしていきたい。地域活性化のためのプラットフォームづくり地域の大学の役割である。」


遠藤学長:

「人をいかにして結びつけるのか,自己中心の利益追求を目標にしては成り立たない。コミュニティの対象をどこに置くか,目標値をどこにおくのかを決め,自己のためでなく地域のために地域活性化に取り組む人材を応援するのが今の大学の役割である。」


長島氏:

「Just do it.すぐにやってしまうことが重要。他地区や他業種のマッチングを積極的にやることで地元の企業が笑顔になる。」